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科目別アドバイス(数学)

数学3 関数のグラフの描き方




ここでは前回の記事で紹介した「受験勉強で身に付けておくこと」の5に述べた、関数のグラフの描き方を取り上げましょう。

グラフは定量的な結果を直感的に見える形にするものです。あらゆる科学技術の基本です。私が大学で教えていたとき、困難だったことの一つは、入学して来る学生さんの殆どが、関数のグラフをすぐに描けないことでした。高等学校や塾では、関数のグラフを描くとき、まず1次導関数、そして2次導関数まで求め、増減表を書くように指導されます。これをきちんとやっていないと、減点される・・・と教えられているかもしれません。学生は、グラフを描かせようとすると、必ずこれを始めます。


しかし実際の入学試験において、本当にそのような採点が行われているでしょうか?そのような細かい「減点法」の採点では、良い学生を獲得できなくなります。多くの大学では、もっと実質的な採点が行われているのです。

丁寧なグラフ作成の方法を知っておくことも必要ですが、科学技術の現場では、もっと現実的な方法が必要です。実際には、基本的な関数の特徴の組み合わせによって、複雑な関数のグラフでも、時間をかけずに概形を描けなければいけません。さらに言えば、式を見ただけで、グラフがどのようになるかを、想像できなければいけません。

「最近では関数を入力するとグラフ化してくれるソフトがあるので、そんな訓練は必要ない」という人もいますが、決してそんなことはありません。科学技術の現場では、扱っている関数がどのような振る舞いをするのか、ある程度の感覚を持っていることが非常に重要です。この感覚を欠いていると、様々な間違いが発生します。人間である限り、間違えを犯すことは避けられませんが、それに気が付かなければ、修正することもできません。コンピューターに処理させるにしても、前もって、ある程度の予想ができていなければなりません。

この習得は、独学ではなかなか難しいものですが、次の例題で典型例を紹介しましょう。数Ⅲまでの微分の知識が必要ですので、この記事は、この段階を一応学んだ人が対象になります。解答を見る前に、自分でやってみると良いかもしれませんが、実際にはほとんど計算の必要はありません。



上に与えた略解だけでは解りにくいので、少し解説しておきましょう。関数の形を知るためには、対称性や符合を確かめることが有効です。これだけで、かなりのことがわかります。まず、この関数が隅関数であることは、すぐに気が付くでしょう。したがって、この関数のグラフは左右対称です

次に関数の正負ですが、符号や大きさの判断、増加・減少などの判断をするためには、基本的な関数の振る舞いを良く知っていなければなりません。例題の関数は対数を含んでいますが、対数関数のグラフは下の左側の図のようなものです。

とくに対数関数は変数の値が1より小さいとき、負の値をとることを忘れてはなりません。つまりf(x)はのときに負になります。これは上の右に描いた2次関数のグラフからわかるように、の範囲です。この√2の値は、暗算で出せるでしょう。慣れてくれば、2次関数のグラフさえも、頭に思い描くだけで済みます。


次にするべきことは、特殊な点での関数の振る舞い、また原点から遠ざかって行く場合の漸近的な振る舞いなど、全体的な変化の様子を調べることです。もう一度対数関数のグラフを眺めて下さい。対数関数は、原点で-∞に発散します。したがって、f(x)もx=±1で-∞に発散します。そしてx=0、およびx=±∞でどのような値になるかは微妙な問題で、ここで発散するのか、また有限の値にとどまるのかを、慎重に見極める必要があります。ここではロピタルの定理を使ってx=0の極限値を計算し、原点での値が有限値となることを確認しました。この計算は目視でできるでしょう。最後に、x=±∞の漸近値がゼロになることを見て、遠方で次第に減衰して行くことを確かめています。これで、関数のおおよその振る舞いが分かりました。


以上の考察は、確かに粗いものであり、極大値の位置やその値、また変曲点の位置などの詳細な情報は抜けています(今の場合、それを調べるには関数電卓などが必要になります)。ただ、例えば右半分ではx=1の負の発散点から立ち上がって√2で軸を横切るので、暫くは上昇を続けること、そして遠方ではゼロに落ち着くので、どこかで最大値を持って減衰し始めることは明らかです。それ以上の詳細な情報は、必要があるときにのみ、調べれば良いのです。

研究の現場でなくとも、数学の問題を解くうえで、全部を調べる必要がない場合は多いでしょう。皆さんも、そのような考察を時おり試みると、楽しめると思います。


<補足>

x=±∞の漸近値がゼロになることは、再びロピタルの定理を使って確かめても良いのですが、一般に「対数関数は最弱の関数で、誰とケンカしても勝てない」と覚えておくと良いでしょう。遠方での発散の速度も、原点での発散の速度も、誰よりも遅いので、極限を取ると必ず競り負けます。逆に指数関数は、スペードのエースのような最強の関数です。






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