HOME//生徒の声
-
卒業生インタビュー
インタビュアー:菊地 遥 、
ゲスト:松本 冬馬
(末尾に両氏の紹介があります)菊地:自己紹介をお願いします。松本:はい。私は伊藤先生に大学時代から今まで、10年近くお世話になっています。現在はシーメンスという外資系の会社で、CAE*エンジニアとして働いています。
*CAE=Computer Aided Engineering。自然法則を記述する数式を
コンピュータにより数値的に解き、シミュレーションを行う技術。菊地:10年というと、随分長い間のご関係ですが、伊藤先生の指導の特徴は、どんなところだと思いますか?
松本:基礎を重視します。先生は理論物理学者なので当然ですが、研究では根源的な部分を意識して物事を進めるように指導を受けました。また学問的な指導のなかで、気がつかずに習慣化していた私のいろいろな癖……目的達成を妨げるような思考パターンや行動パターンなど……これらが改善されてきたように思います。
菊地:根源的な部分を意識すると言うのは、すごく抽象的ですが……具体的に、そういった伊藤先生の指導はどこで、どのように役に立ちましたか?
松本:解決しなければならない問題を引き起こしている真の原因を、まず突き止めるというか……仕事をするようになって、探究する姿勢ということが、学問的な研究だけでなく、エンジニアリングにも当てはまることがわかりました。私は技術的な問題に対しても、対症療法ではなく根本的な解決を心掛がけています。
菊地:対症療法と根本的な解決を目指すというのは、結果として、どこに大きな違いがあるのですか?
松本:真の原因に対処するというアプローチは、時間的・コスト的に無駄が多いように見えますが、達成できたときは副次的な問題を引き起こさず、次のステップへの移行をスムーズにします。このことを、エンジニアとしてのキャリアの中で実感しました。
菊地:なるほど……少し先を考えるなら、結局はその方が無駄がなくて、正攻法なんですね……。それともうひとつ、松本さんは先程、「目的達成を妨げるような思考パターンや行動パターンが改善された」とも言われましたが、どのような変化があったのですか?
松本:社会人としての成長を加速させたように思います。学生時代は漠然と、学問上の注意と受け止めていましたが、社会に出て責任を持つ立場になって、これらがすべてにおいて重要だと気がつきました。
菊地:具体的にはどのような点を注意されたのですか?
松本:色々ありますが……例えばコミュニケーションの問題ですね。質疑応答や打ち合わせの際に、人の話を良く聞いて、具体的な情報をしっかり受け取るように、とか……。
菊地:わあ、耳が痛い……(笑)
松本:ホントですね……あ、いや、失礼!(笑)。また話すときは言葉を正確に、相手の予備知識に応じて話の順序を良く考えて……などと、よく注意を受けました。
菊地:う~ん……でも、どちらかと言えば、当たり前のことばかりですよね?
松本:そうなんですが……でも、これを実際に進行中の自分の勉強や研究に即して注意されましたので、とても良い実戦訓練になりました。学問は当たり前のことの積み重ねだと実感しました。そして社会人になって、この重要性を、より強く意識するようになりました。意識し続けることによって、自分の頭が整理できて、周囲の方々との無駄なやりとりが減っていき、最終的には顧客からも、コミュニケーション能力を評価していただけるようになりました。このように持って行けたのは、伊藤先生の指導の基礎があったからだと思います。
菊地:その他にも、伊藤先生の指導を受けて、変化した部分がありますか?
松本:これも基礎を重視するということのひとつかもしれませんが、物事をきちんと考える習慣がついたと思います。大学入試では、解き方を知っているだけで問題が解けることが少なくありません。一方で研究の現場やエンジニアリングの現場では、決まった解決法があるわけではなく、自分なりに問題を把握し、自分の知識を総動員して、何ができるかを考える必要があります。私は高校まできちんと勉強せず、大学受験を小手先の技術で乗り切った部分がありましたが、伊藤先生の指導で、エンジニアとしての基礎を学ぶことができたと思います。
菊地:ところで、外資系の会社にお勤めということですが、お仕事ではやはり、英語もかなり必要でしょうか?
松本:それなんですが……まあ普段は日本語の職場なので、今のところ自分が受け持つ仕事で困ってはいませんが、それでも結構重要な社内メールが英語だったり、研修に参加するとプレゼンが全部英語だったり……。
菊地:研修を英語で!それは厳しい……。
松本:英語しか話せない社員もいますし、どうしてもそうなりますね。海外出張もいずれはあると思います。
菊地:ご自分でもかなり勉強されていたんですか?
松本:それが……在学中はゼミなどで英語の文献も読んでいましたが、伊藤先生は私が誤訳すると意味を直されるだけで、それ以上は注意されませんでした。たぶん、私の英語は、諦めておられたのでしょう……(笑)。ところが外資系で働くということになって、これは大変だと……何度か集中レッスンをしていただき「英語の構造がまったく身についていない」とかなり叱られました。それと卒業後に知り合ったヨーロッパの友人が一人いて、ネイティヴの人ではありませんでしたが、慣れるという意味では、彼と話す機会が勉強になりました。
菊地:それで一応、大丈夫なレベルに?
松本:いえ、今でも「しごかれ」続けています。先生とのメールのやりとりは、すべて英語という決まりです。物理の話から雑談や飲み会の知らせまで、全部です。私からメールを差し上げると、先生はお返事とともに、すぐに文章を直してこられます。
菊地:う~ん、それは……頑張ってください(笑)。最後に、これから伊藤先生の指導を受ける学生に向けて、メッセージがありましたら、お願いします。
松本:あくまでも広い意味で、ということになりますが、「勉強で身を立てたい」と考える人にとって、とくに有意義な指導が受けられると思います。私は高校3年生のときに、そのような決意をしましたが、その年のセンター試験の偏差値は30未満でした。出発点は厳しい状況でしたが、伊藤先生の指導で、最先端の研究開発や設計業務に携わり、研究者や上級のエンジニアの方々と仕事ができるようになりました。そこで感じたことですが、そのような方々は専門的な知識・能力だけでなく、総合的な人間力が非常に高いということです。私は先生のサロンに参加し、今も勉強を続けています。直接仕事に関係しなくても、自己研鑽は人間力を高めると思います。今まで勉強を続けてきたことは、私に「やってやれない仕事はない」という自信を与えてくれました。サロンのコースは、そのような力を与えると思いますし、大学に入学する前に先生の指導を受け、正しい学習習慣を身につけることは、大きな強みだと思います。
菊地:Thank you very much for joining us today.
松本:My pleasure.(笑)
菊地 遥 (きくち はるか)
大学時代はバイオ系の学科に学ぶ。
御主人は電気・電子系がご専門の理系夫婦。お2人でPhysics Neverlandの社会人セミナー「相対論入門」に参加されていました。2児の母。
松本 冬馬(まつもと とうま)
サロンメンバー、代表の在職時代の教え子。在学中は量子系の時間発展の精密計算を行う手法を開発。現在は流体系の計算等を中心として活躍中。32歳 理学修士。