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英国の社会2

前回の記事では英国の階級社会について書きましたが、人々の生活感覚が最もはっきり感じられる場所の1つは、お酒を飲む所です。

お酒を飲むところは、英国ではパブと呼びます。仕事帰りに「一杯やるか?」と誘うときの決まり言葉は、 Would you like a pint ? です。これは「ビールを飲みに行こう」という意味で、体積の単位であるパイント(大ジョッキ1杯)を使った表現です。下の写真はその半分のハーフパイントですが、英国のビールは炭酸があまり入っていないので、殆ど泡は出ません。どのパブでも、摺り切り一杯、なみなみと注いでくれますので、ハーフ・パイントでも日本の中ジョッキ以上の量があります。

パブでウィスキーやブランデーを飲む人は、あまりいません。ワインは女性が結構飲んでいますが、とくにウィスキーは、ビールに比べるとずっと高いので、飲む人は非常に少ないようです。



パブとラウンジの違い

昔からの住宅地(village)には必ず、教会、郵便局、パン屋、そしてパブが、必ず一軒ずつあります。そしてパブは人々の交流の場です。パブはそれぞれ、自家製のビールを作って個人営業していますので、品質の評価が高いところには、遠くからやって来る客もかなりいます。ビールを飲んで車を運転して帰っても、泥酔していなければ問題はありません。このようなパブに何度か誘われていましたので、私は最初のうち、飲むところはすべてパブだと思っていました。

やや驚くことですが、大学のキャンパス内にもパブがありました。しかも昼休みから開いています!日本ではあまり考えられないことですが、大学の教官や大学院生が、ジョッキを片手に昼食を・・・という光景が時々みられます。最初はかなり抵抗感がありましたが・・・結局、私も仲間と一緒に、時々やるようになりました。さすがに学部学生が昼間からビールを飲んでいるところは見たことがありませんが、夕方になると彼らもパブにやって来て、時々はディスコに早変わりします。

パブという呼称は、正確には労働者階級の人々がビールを飲むところで、中流以上の人々が飲むところはラウンジと呼ばれます。こちらではウィスキーやブランデーを飲んでいる人々も良く見かけます。入り口が共通で、中に入ると左手と右手でパブとラウンジに分かれている、という場合が多くありますが、日常の呼称としては、パブで統一されています。わざわざラウンジと呼ぶと、やや嫌味になるかもしれません。

パブとラウンジに分かれているところでは、パブの方は人々でごった返し、猛烈な騒音で話もできないことがあります。そもそも、通常の日本人の服装で行けば、人々は親指でドアの方向(つまり反対側のラウンジの方向)を指し示し、「お前らはあっちだ」と追い返されます。

一方、ラウンジは別世界で、人数は少なく、信じられないほど静まり返っています。日本のバーをずっと広く、照明を明るくしたイメージです。東洋人が入ると、人々が一斉に振り向き、「ここはお前の来るところかよく考えろよ」と無言のメッセージを送ってきます。日本の居酒屋のように大きな声で話せば、すぐさま追い出されることは間違いないでしょう。

パブとラウンジで、料金に非常に大きな違いがあるわけではありません。ラウンジの方が2割から最大で3割程度、高かったと思いますが・・・それが労働者階級の人々にとって、重要な差になっています。

 

金曜日のパブには近づくな

私がそのようなところのパブに初めて行ったのは、金曜日の夕刻でした。結局、追い出されてラウンジに向かいましたが・・・その体験を、ボスのY教授に話したところ、パブに2種類の意味があることを説明され、ラウンジと区別する意味で「パブ」と表示されている場合には、ラウンジを選ぶようにアドバイスされました。

とくに「金曜日のパブに行ってはいけない」と注意され、このとき初めて、英国の給与方式について話を聞きました。大学では、私は月給として給料を貰っていましたが(ボーナスはありません)、月給は比較的給料の高い職に限られ、労働者階級の賃金は必ず週給で払われるそうです(私の給料が高い方に入っていたとは!)。

・・・そして金曜日は、彼らの給料日です。

週給としているのは、彼等が一度に使いすぎて生活破綻を起こしたり、その結果、犯罪が増えることを防ぐためだそうです。そのために、少しずつ渡すのです。

Y教授によると、「彼らは、金を手にした日にはパブに直行し、したたかに飲んで騒いで・・・喧嘩して・・・夜遅くに家に帰ってワイフを殴って・・・金曜日はそういう日なので、喧嘩に巻き込まれないように、パブに近づいてはいけない」 ということでした。

労働者階級について、余り印象の良くないことを書きましたが、Y教授は差別意識を持っていた訳ではありません。家に帰ってワイフを殴る・・・というくだりも、明るく笑いながら話していました。

Y教授夫人は、もともと看護婦さんであり、彼女の父親は、彼女の働いていた病院の庭師でした。つまり典型的な労働者階級の人々です。結核で入院した若き日のY教授を看護し、支えたのが彼女でした。

階級によるライフスタイルや人生の考え方の違いについては、別の機会にもう少し書くことにしましょう。

 

(続く)

 

 
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