計算しない物理学: 例題2
例題1に続いて、2022年度のセンターテストからもう1つ、やってみましょう。ここでの考察は、例題1の場合に比べると、かえって面倒になり意味がないと感じる人も多いと思いますが、方法の解説のためですので、御了承ください。「第4問」の「問1」です。
解説の前に、ひとつ復習しておきましょう。復習する必要のない方は、本論まで読み飛ばしてください。
多くの皆さんはご存じと思いますが、物理学の最も重要な概念の1つに、ディメンション(次元)があります。長さ、時間などを基本的な次元として(それぞれ [ L ] 、 [ T ] と書かれます)、物理量の種類をはっきりさせるものです。
上の例題の場合、設問のアで聞いているのは角速度、イで聞いているのは速度の差、つまり速度としてのディメンションを持つ量です。
まず角速度とはどのような量でしょうか?これは、角度が時間と共に変化しているときに、その変化が単位時間当たりに(具体的には1秒間に)どのくらいか、という量です。つまり、角度の変化を所要時間で割った量です。
角度の次元は? これはもちろん、ラジアンで測った角度です。ラジアンとは半径に対する広がりの円弧の長さです。つまり、長さを長さで割った量なので、次元を持ちません。強いて言えば、 [ L/L ]= [ 1 ] という無次元の量です。
したがって角速度は、次元を持たないラジアンという量を時間で割るので、時間の逆数 [ 1/T ] という次元を持ちます。
そして、イで聞いている速度は・・・もちろん、単位時間あたりに進む距離ですから、距離を時間で割った [ L/T ] という次元を持ちます。
さて、ここから本論ですが・・・
解答の選択肢を眺めてみると・・・アとしては、①~③の式は長さ×速度、すなわち [ L×(L/T)=[L²/T ]となり、 [ 1/T ] の次元になりません。④~⑥の式は[ (L/T)/L ]= [ 1/T ]となって、正しい次元を持ちます。
イの選択肢としては3種類ありますが、ゼロは無いでしょう。⑤では長さ×速度の2乗×時間、すなわち [ L×(L/T)²×T ]=[L³/T ]となって、速度とは異なる次元の量になりますが、⑥では[(L/T)²/L×T]=[ L/T ]と、まさしく速度の次元となります。正解は⑥です。
このような「次元解析」を行うためには、色々な物理量の定義をしっかり覚えておく必要があります。私が教える時に定義や概念にやかましいのは、このためもあります。もちろん、定義の重要性はこれだけにとどまりませんが、次元解析を習慣づけておくと、計算間違いの大半は未然に防げます。これは物理学に限らず、経済学やその他の様々な数理科学にも当てはまります。
ちなみに「第4問」の「問3」も、ディメンションを丁寧に調べれば、正しいものは1つしかありません。問題文に与えられている式から、プランク定数のディメンションは質量×速度×距離であることが分りますので、これを利用できます。ただ、選択肢に与えられている式は、いずれも面倒な形をしているので、慣れていなければ、現実的な時間内に正解を見つけるのは難しいでしょう。簡単に行う方法はありますので、いずれ別の機会に述べます。
さらに「問4」にいたっては、
という、知識を問うだけの問題ですが、これはディメンションを調べるまでもありません。エネルギー差が縮まれば、放出される光子(電磁波)のエネルギーは小さく、したがって振動数も小さくなります。これが無限大に発散する③と④は問題外です。また振動数は負にはなりませんから、①も除外されます。
解説の前に、ひとつ復習しておきましょう。復習する必要のない方は、本論まで読み飛ばしてください。
多くの皆さんはご存じと思いますが、物理学の最も重要な概念の1つに、ディメンション(次元)があります。長さ、時間などを基本的な次元として(それぞれ [ L ] 、 [ T ] と書かれます)、物理量の種類をはっきりさせるものです。
上の例題の場合、設問のアで聞いているのは角速度、イで聞いているのは速度の差、つまり速度としてのディメンションを持つ量です。
まず角速度とはどのような量でしょうか?これは、角度が時間と共に変化しているときに、その変化が単位時間当たりに(具体的には1秒間に)どのくらいか、という量です。つまり、角度の変化を所要時間で割った量です。
角度の次元は? これはもちろん、ラジアンで測った角度です。ラジアンとは半径に対する広がりの円弧の長さです。つまり、長さを長さで割った量なので、次元を持ちません。強いて言えば、 [ L/L ]= [ 1 ] という無次元の量です。
したがって角速度は、次元を持たないラジアンという量を時間で割るので、時間の逆数 [ 1/T ] という次元を持ちます。
そして、イで聞いている速度は・・・もちろん、単位時間あたりに進む距離ですから、距離を時間で割った [ L/T ] という次元を持ちます。
さて、ここから本論ですが・・・
解答の選択肢を眺めてみると・・・アとしては、①~③の式は長さ×速度、すなわち [ L×(L/T)=[L²/T ]となり、 [ 1/T ] の次元になりません。④~⑥の式は[ (L/T)/L ]= [ 1/T ]となって、正しい次元を持ちます。
イの選択肢としては3種類ありますが、ゼロは無いでしょう。⑤では長さ×速度の2乗×時間、すなわち [ L×(L/T)²×T ]=[L³/T ]となって、速度とは異なる次元の量になりますが、⑥では[(L/T)²/L×T]=[ L/T ]と、まさしく速度の次元となります。正解は⑥です。
このような「次元解析」を行うためには、色々な物理量の定義をしっかり覚えておく必要があります。私が教える時に定義や概念にやかましいのは、このためもあります。もちろん、定義の重要性はこれだけにとどまりませんが、次元解析を習慣づけておくと、計算間違いの大半は未然に防げます。これは物理学に限らず、経済学やその他の様々な数理科学にも当てはまります。
ちなみに「第4問」の「問3」も、ディメンションを丁寧に調べれば、正しいものは1つしかありません。問題文に与えられている式から、プランク定数のディメンションは質量×速度×距離であることが分りますので、これを利用できます。ただ、選択肢に与えられている式は、いずれも面倒な形をしているので、慣れていなければ、現実的な時間内に正解を見つけるのは難しいでしょう。簡単に行う方法はありますので、いずれ別の機会に述べます。
さらに「問4」にいたっては、
という、知識を問うだけの問題ですが、これはディメンションを調べるまでもありません。エネルギー差が縮まれば、放出される光子(電磁波)のエネルギーは小さく、したがって振動数も小さくなります。これが無限大に発散する③と④は問題外です。また振動数は負にはなりませんから、①も除外されます。
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