概念の重要性
自然な学習とは、最初に新しい概念を正しく把握することから始まります。とくに理系科目では、何をやっているかを掴むために、これが最も大切です。概念というとやや堅苦しいですが、単に「適切なイメージ」と考えて良いでしょう(概念については、別の記事にも書いていますので、そちらをご覧ください)。人間の脳は、イメージを持たずに機能するようには設計されていませんので、この最初の段階をスキップすることはできません。
そしてまた、様々な約束事(=定義)はしっかり覚えておくことが必要です。ここで「記憶は重要ではない」とか「物真似は独創性を育てない」などと言いだすのは論外です。約束事が共有されていなければ、学問的な情報交換ができませんので、学習も不可能です。私の経験では、「わかりません」と言う学生の実に90%以上が、定義を正しく言えません。最初の段階を自動的にスキップすることが習慣化しているのですが、一つ一つ段階を固めずに次を積み上げようとすれば、足元から崩れます。
約束事には必ず必然性があります。その必然性は、概念の共有から来ています。ですから、覚えると言うより、概念を正しく把握すれば、約束事は自然に身に付きます。
理系科目の学習では、概念を把握し、約束事を共有した後は、問題演習に挑むのが常道です。ここでは、単に解き方を覚えるのではなく、まず自分で考えることが必要です。解決の方法を自分で見つけ出す能力を鍛えることが、学習の主要な目的です。新たに学習した事柄を応用して問題を解決する、という訓練を行うことによって、はじめて問題を解決する能力(=研究力)を育てることが出来ます。これが最も自然な学習です。
外国語でも大切な概念の把握と自然な学習
概念を正しく把握すること、自然な学習方法によることは、理系科目だけでなく、外国語の学習でも重要です。異なる言語は異なる構造を持ち、異なる概念から組み立てられています。これらは「何となく慣れ親しむ」のではなく、客観的に理解しなければなりません。
そして外国語の学習は、暗号解読の訓練ではありません。外国語はあくまでも言葉として、自然に学ぶことが必要です。外国語の学習については、別のところに詳しく書きたいと思いますが、一般に外国語の学習は、一旦始めたら、一定の段階まで一気に進むことがベストです。これが自然な学習であり、自分の成長を実感できるスピード感が、学習意欲を持続させます。
自分の将来に関わっているという自覚
当然のことですが、人は自分に無関係なことに対しては真剣になれません。将来、自分の仕事で必要になるという意識によって、必然的に勉強のやり方が自然になります。
「学校で学んだ知識など社会に出れば必要がない」と考える人々が少なくないようですが、これが手っ取り早い方法に走らせる原因のひとつでしょう。少なくとも理系の場合、それは正しくありません。
正しくは、社会に出れば学校で学んだ知識では足りないのです。人生は選択の連続ですが、理系人に与えられる選択肢は、常に「自分に出来る範囲を拡げる」ための努力を前提とするものばかりです。「いま出来る」ことだけでは、どの時点でも人生は成立しません。この意味で、「自然で正しい勉強の習慣」こそが、将来に最も必要なことと言えるでしょう。そして、自分に出来る範囲を拡げることによって、人生は楽しめると思います。