数学1 数学が苦手な人は理系に進むのはやめた方が良いか?
理系に進みたいが数学が苦手なので、やめた方が良いでしょうか?・・・というのは、非常によく受ける質問です。
この質問にお答えするのは少し後にして、「数学が得意な人は理系に向いているか?」という質問の場合はどうでしょうか?
この場合の答えは、一般には「ノー」になると言えるでしょう。もちろん、数学が得意な人は理系に向かない、と言っているのではありません(数学そのもの、および情報科学の一部の分野に進む場合などは、明らかにイエスです)。数学が得意なら誰でも理系に向いているわけではない、という意味です。
理由は、数学は自然科学の言葉ではあるが自然科学ではないからです。
A×B=Cという式は、「BのA倍はCに等しい」という言葉と同じです。実際に英語では「A times B is C」と音読します。この言葉自身は、誰にとっても共通です。
しかし、その意味するところは、人によって大きく異なります。例えば、
物理学者の場合: A=速度、B=時間、C=距離
経済学者の場合: A=値段、B=個数、C=支払金額
などとなります。ところが、数学や情報科学にとっては、A,B,Cが何を表すかは、どうでも良いのです。単に、代数系を構成する要素間の関係が与えられているに過ぎません。したがって、数学そのものに心が向く傾向の人は、実体を扱う理系分野には興味が向いていない、という場合があり得ます。数学が好きなことと、扱っている対象が好きであることを混同してはいけません。
この勘違いは、物理学(とくに理論)が数学を多用することから来ていると思います。もちろん、高等学校で学ぶ数学は、基礎としてすべての理系分野で重要ですが、数学と深い関係を持っている理系の分野は、それほど多くはありません。
数学は必要に応じて使えれば良い
数学は、殆どの理系分野に進む場合に、入試科目として指定してされています。しかし、上に書いたように、数学は自然科学ではないので、多くの理系分野では、いったん研究の現場に立ってしまうと、数学との接点は薄くなります。
ただ理論物理などの場合には密接な関係があり、むしろ数学をある程度楽しむ余裕が欲しいところです。高校生のうちに数学の難問にチャレンジすることは、良いトレーニングになります。また、それほど数学を必要としなかった分野でも、あるときから、飛躍的に必要となる可能性は常にあります。計量経済学の発展が良い例です。
研究を進める上で必要な数学がでてきたら、それを勉強し、言葉として理解できれば良いのです。私は、数学を必要に応じて学ぶ意志があれば苦手でも問題ないとお答えしましょう。
ただ、「どうしても数学だけは絶対に避けて通りたい・・・でも理系に進みたい」というのは「英語は大嫌いだが、どうしてもアメリカで暮らしたい」というのに、やや似ていると言えるでしょう。
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