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研究職を目指す方々へ

3.ポスドク(短期研究員)制度






ポスドクとは、ポスト・ドクトラル・フェロー(Post Doctoral Fellow)の省略形です。日本語に特有の省略言葉のように聞こえますが、英語でもほぼ同様に「Pos. Doc.」と発音されます。

さすらいの研究者


かつて日本では、大学院で博士号を取得すると、大学の助手に採用され、教授のもとでさらに研鑽を積み、一人前の研究者に育つ、というのが一般的なアカデミック・キャリアの積み方でした。

「かつて」と言うのは、高度成長期中盤あたりまでのことです。その後は教員のポストが不足し、この習慣が次第に崩れ、若手は大学院を修了すると、契約期間が限られた短期研究員のポストを渡り歩くようになりました。そして、しかるべき業績を積んだ人々が、正規の大学教員として採用される、という時代に変わってきました。人事形式も、学会ごとの申し合わせや文部科学省の指導によって、最初から出身大学で正規の職を与えることはほぼ禁止され、公募による採用が原則となりました。

​​実は海外では、ずっと以前から、これが通常の形態でした。大学教授など研究機関のシニアなポジションに就いている人々は、政府に研究テーマを申請し、人件費を含む研究予算を獲得し、若い研究員を雇います。「ポスドク」とは、このような短期研究員のポストの総称です。

過渡期の日本にはこのような短期のポストが少なかったため、大学院を修了すると日本から海外のポスドクに応募するのが一般的でした。そのような日本人は、今でも数多く海外の大学で研究しています。

現在では日本の多くの大学でも、助手のポスト(最近では助教という名称に変わっています)に任期制が導入されるようになりました。これらは海外のポスドクと同等と見做されています。大学以外の研究機関にも短期若手ポストが導入されるようになり、海外から日本に応募する人も増え、双方向の交流の時代となりました。


厳しいポスドク時代


ポスドクは民間企業で言えば非正規雇用であり、率直に言って、研究者のポスドク時代は薄給です。年齢にスライドして昇給する研究機関もありますが、それはそれで問題が発生します。昇給のある研究機関では、人件費の抑制のため若い研究員を雇う傾向が強く、30代の半ばで契約が打ち切られることが殆どだからです。​​


また昇給の問題とは別に、この年代に差し掛かると、大学の正規の教員に採用されることは一般に難しくなります。日本の大学等では、採用に際して年齢構成を考慮する伝統が強いためですが、若い人を優先する傾向は、どの国でも変わりません。したがって一般的に言えば、アカデミックなキャリアを積むためには、この年齢までに一定以上の業績を積んでいることが求められます。ポスドクの期間を泳ぎ切るためには、学生時代から色々な分野で仕事が出来る基礎力を高めておくことが重要です。



理系に有利な今後の雇用形態


現在、ネット上では、ポスドクの身分が不安定なことや、一部の分野で顕著になっている契約終了後の就職難など、この制度の否定的な側面がしばしば話題になっています。しかし​一方で、ポスドクの人々には、企業から熱い視線が向けられています。


これは「理系のパスポート」や「理系の研究職」など、これまで他の記事に書いてきた産業の高度化と、強く関連しています。一般にアカデミックな研究職に比べると、企業の研究機関は待遇面で魅力があり、ポスドクを経て海外の企業に就職する人々も多くなりました。また企業の研究活動と学術的な基礎研究との関連性が強まった結果、企業とアカデミックな研究機関との人事交流は盛んになり、企業から再びアカデミックな世界に戻る人々も少なくありません。


​このような状況変化は、民間企業における雇用形態の変化ともリンクしています。現在、民間企業においては(日本だけでなく世界的に)、非正規雇用が増え続けています。この点についての是非はともかくとして、非正規雇用を経て正規雇用へ移るのが一般的という時代は、日本でもすでに目前かもしれません。


今後は、アカデミックな世界の雇用形態と民間企業の雇用形態が近づき、研究者の世界での人事交流も、通常の転職の中に組み込まれて行くことが必然の流れです。現在、その方向への変化がはっきり見えていますが、将来は理系のキャリアの積み方として、ポスドクを経て企業へ、そして大学へ、再び企業へ・・・というように、様々な道が出てくるでしょう。


大変厳しい時代の到来のようにも見えますが、理系の人々にとっては、これはむしろ生き易い社会と思われます。産業立国を目指す限り、理系の人材が不可欠であることに変わりはありません。そしてポスドク経験者は、理系人としての実力、国際感覚、人間力を形成するために、最良の経験を積んだ人々です。企業もそれを良く理解するようになりました。研究者は様々な職場に進出し、彼等の創意・工夫の習慣と能力が、次世代のテクノロジーを拓いて行くと思います。その過程で、能力の高い研究者は、より条件の良い上級職を求めることが容易になり、研究職全体として、かなりの待遇向上も見込めると思われます。


その一方で、一部の人々は職場にとどまることが難しくなる、ということは起こり得るかもしれません。しかしこれは、すべての業種に予想される共通の状況であり、理系人はその点で、あまり悲観的になる必要はないと思われます。先行している海外の実情をみれば、流動的な雇用形態は、選択肢の拡がりと研究職の市場開放を促し、研究者の需要と研究職の範囲を拡げています。職種と待遇のバランスを測ることにより、むしろすべての理系人にとって、職は得やすくなるでしょう。そしてこれは、研究職の人々にとって、国際的なキャリア、また専門性の垣根を越えた対応能力が求められる時代の到来を意味します。








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